何年か前の紅白歌合戦で、歌手の秋川雅史が歌って大ヒットになった 【 千の風になって 】 の原詩は、わずか十二行の英文詩で十九世紀頃から作者不明のまま朗読詩として、世界各地に広まったと言われる。

【原詩】

a thousand winds
Do not stand at my grave and weep
I am not there, I do not sleep,
I am a thousand winds that blow,
I am the diamond glints on snow.
I am the sunlight on ripened grain.
I am the gentle autumn,s rain
when you awaken in the morning,s hush,
I am the swift uplifting rush
Of quiet birds in circled flight.
I am the soft stares that shine at night.
Do not stund at my grave and cry;
I am not there I did not die.

この英文詩は、ジョン・ウェインが映画監督ハワード・ホークスの葬儀で朗読。 マリリンモンローの二十五回忌にも朗読され、また、2001年9月11日のニューヨーク同時テロで犠牲になったシェフ父の一周忌で、娘さんがグランド・ゼロで朗読されたという。

日本では、作詞作曲家の 新井 満 が写真詩集【 千の風になって 】と、自ら作曲歌唱したCDを発表したもの・・・・・

【千の風になって】

私のお墓の前で 泣かないでください
そこに私はいません 眠ってなんかいません
千の風に 千の風になって あの大きな空を 吹き渡っています
秋には 光になって 畑にふりそそぐ 冬は ダイヤのように きらめく雪になる
朝は 鳥になって あなたを目覚めさせる 夜は 星になって あなたを見守る
・・・・・・あの大きな空を 吹きわたっています・・・・・・・

内容は、亡くなった人より私たちへのメッセージともいわれ、家族や親しい友人などが、亡くなったら誰もが哀しまれるだろうと思うのだが、この詩のように 実は死んでなんかいないのだ。 今は、形は変わっても常に、ある時は光や雪になって、また、ある時は鳥や星になって、そして千の風になって私たちの周りにいるんだという

・・・・・・・・・・そう思えば、特に哀しむことも寂しくなく、いつでも身近にいてくれるんだと・・・・・・・・・・

三蔵法師玄奘がインドに渡り翻訳されたという仏説魔訶般若波羅密多心経は、偉大なる真実に目覚める智慧の教えであるという。『色即是空・空即是色』 という一節があるが、『色』は、形のある壊れ変化するもの、欲望の対象となるもの。 『是空』は等しい事。 『空』は、何もとらえるべきものがなく、実態がないこと。 また、『無苦集滅道・無智亦無得』は、人生は苦なり、人は誰しも 『生・老・病・死』 という四苦から逃れない

・・・・・・・さらに、愛する人と別れなければならない『愛別離苦』。憎しみ合う人とともに過ごさなければならない『怨憎会苦』。 求めても得られない『求不得苦』。 身も心も苦しみの原因を抱えている『五蘊盛苦』 の四苦を合わせて 『四苦八苦』という~~~そして羯諦羯諦・波羅羯諦・波羅憎羯諦・菩提薩婆訶般若心経

・・・・・・・即ち、真実の世界へ みんなで共に行き、仏の悟りを成就しよう!智慧と真髄の」教えを終わる。少しお先にと逝ってしまった身内や友人たちも、今は光や雪や鳥や風になって、悠々と空を飛びまわっている

・・・・・・もし、そんなふうに考えるなら私たちの気持ちが、どんなに明るくなれることだろうと・・・・・・・。

良寛の『散る桜 残る櫻も 散る桜』 の詩のように、人は誰しもが散る桜となり、そして 千の風になり、色は即ち空であると思うなら如何なものだろうか?!。

---- 昭和32年卆(法) 佐藤 義 ----